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絵画教室アトリエオーブ/画家 今尾則之のブログです。
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春が来たかと思えば、また寒くなって困った季節です。

さて昨年、このブログでもアトリエのモチーフをご紹介して
きました。あれからも少しずつですが、新しいモチーフが
増えましたのでいくつかご紹介させて下さい。

まずは、拙宅の持ち寄りコレクションから



頂き物のバルサミコ酢セットです。この木箱は昔デッサン講座で
立方体の静物モチーフに使ったことがあります。あのとき参加して
下さった皆さんの懐かしいデッサンを思い出します。ちなみに
中身のバルサミコは速攻で美味しくいただきました。

続いて同じくアヒルの籐籠(とうかご)です。



前々からモチーフに考えていて、今回晴れてアトリエの仲間入りです。
籐籠はあまり真面目に取り組みすぎると見るのもイヤになってしまうので、
デッサンでも着彩でも、雰囲気を捉えるというような軽めの気持ちで
描いてくれると嬉しいです。

もう1つおまけでキノコのローソクです。



うーん、果たしてモチーフとして機能するのか、我ながら
少し不安ではありますが、たとえば組みモチーフの1つとして
良いのではないか、と勝手に想像しています。キノコ好きの方も
そうでない人も活用していただけたら嬉しいです。

次はイケアからの戦利品、吹きガラス瓶とグラスです。



ガラス製品を描くときは、デッサンでも着彩でもなるべく簡単な形
の方が映り込みや反射など描きやすいのではないかと思い選びました。
これ以上無いほどのシンプルさに心打たれます。

最後は流木です。



こちらは先日講師仲間のOさんがアトリエを見に来てくれて、自作の
キャンバス(古典技法で地塗りを施したもの)や溶き油とともに
アトリエのモチーフとして頂戴しました。早速、流木は木炭デッサン
で使っていただいています。

Oさん、お忙しいところ本当にありがとうございました。

またこれからアトリエでも、見たら思わず描きたくなるような、
そんな面白いモチーフを揃えていきたいと思います。





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いよいよ春到来です。
昨年のこの時期はドタバタに埋もれて恒例の桜見物が
出来なかったので、今年はその反動で3回も行きました。

桜といえば花見、花見といえば酒。以前このブログでも書きましたが
フランスに居た頃もアーティスト仲間とパリ郊外の公園に繰り出して、
お花見会をしました。(過去ブログ「サクラサク?」もご参照下さい。)
日本から遠く離れた異国の地で、ニッポン丸出しの飲み会をして、
おまけに三十過ぎのオッサンたちでドッジボールをしたあの日のことは、
今でも良い思い出として心に残っています。

まぁ僕の場合、桜に関係なく酒は飲んでいるのですが...。

おそらく父親の影響だと思いますが、僕は酒が好きです。
基本的に一年365日飲みます。種類にこだわりはありません。
最近ではビールとフランスで覚えたワインを飲みます。

ワインと言っても、僕のワイン選びは「安かろう多かろう」で
本当のワイン好きには怒られそうですが、質より量ということで、
パリでも2~3ユーロのものを愛飲していました。

絵描きの生活パターンもありまして、パリの頃から一人酒の時間が
圧倒的に増えてきて、今ではすっかり一日終わりの楽しみとして定着
しています。気心の知れた人と酒を交わすのはもちろん楽しいのですが、
あまり大人数で飲むと「過ぎる」ことが多くなるので苦手です。
日本でもパリでも大勢で飲んで「過ぎて」バカ騒ぎをして、翌日には
起き上がれないほど後悔した経験が山ほどあります。

「飲んでは恥じ、そしてまた飲む」

これは酒飲みの業なのかもしれません。
たとえ一人酒でも、飲み過ぎた次の日は何か恥ずかしい気がします。

パリでは飲みながら絵を描くこともありました。役に立つ時もあれば、
まったく無為に終わることもあります。一度深酒したあと描いたら自分で
何をやっているのか判らなくなって絵もバッチリ壊れたので、それ以来
沢山飲むときには描かなくなりました。

勝手な憶測ですが、絵描きや彫刻家には酒好きが多いのではないかと
思います。大学時代もパリでのアーティスト仲間も、酒が全く飲めない
という人には会ったことがありません。むしろ皆、よく飲むタチでした。

広島に「酔心」という酒があります。
この酒を終生愛飲していたのが横山大観です。

大観と「酔心」にまつわる有名なエピソードがあります。
ある日、横山大観の家を「酔心」の社長が訪ねたときのことです。
二人は話し込むうちに意気投合し、大観は「生涯酔心しか飲まない」
ことを誓い、社長は「一生の飲み分」を約束したそうです。

ウソかホントか、大観は平均して日に二升三合(!)を飲んだと
言われていますので、この約束を果たした蔵元はスゴいと思います。

大観の酒好きは筋金入りで、亡くなる少し前に一度重篤になった時、
薬も水も受け付けなかったのに「酔心」だけは喉を通して、翌日から
徐々に回復したという記録があるそうです。

数年前、国立新美術館で横山大観の大規模な展覧会が開かれました。
これだけの作品をまとめて観るのは初めてだったので、嬉々として
会場を廻ったことをよく覚えています。「寂静」「正気放光」、
「生々流転」など今も強く印象に残っています。「生々流転」は
巻物で全長40mもあって、ゆっくり眺めながら歩くと作品のなかに
入り込んだような感覚になります。

大観は酒を飲んで絵筆をとることがなかったといいます。
日に二升も飲んで酒が抜ける時間帯があるのか、少し信じられない
気もしますが、酒を飲んでいようがいまいが、その作品たちは全く
動じることなく悠然と存在していました。





「制作するときに音楽をかけますか?」

絵描きや彫刻家なら、誰でも一度は仲間内でこんな話題が出たり、
また人に訊かれたりした経験があると思います。

自分自身の制作で考えてみると、まだ若くて、間が持たないときなど
音楽を聴きながら制作していましたが、曲に入り過ぎたり、何を描いて
いるのか解らなくなることがありまして、今はあまり音楽をかける
ことはなくなりました。

ただ、明らかな単純作業が続く場合やどうにも気持ちが入らない時には
音を聴きながら描くこともあります。基本的にジャンルはバラバラで
クラシックからパンクまで、その時の気分で選びます。

足かけ5年に渡りアルベルト・ジャコメッティのモデルをつとめた哲学者
矢内原伊作の著述によると、ジャコメッティは、毎回ではないにしても
しばしば隣りの部屋に居る奥さんが流すクラシックを聴きながら制作して
いたそうです。ジャコメッティの制作は常に難渋を極めて、アトリエの
空気も張りつめていたので、隣から流れてくる音楽は二人を慰めてくれた
そうです。特に彼はヘンデルを聴きたがっていて、さらに余談ですが、
グレゴリオ聖歌を「呼吸のように自然だ、これこそ真の音楽だ」と絶賛
していたそうです。

タイプはかなり違いますが、ジャン=ミッシェル・バスキアも制作中は
ジャズを聴いていたようです。彼の場合は実際に音楽活動もしていたので、
絵と音楽とがかなり密接な関係にあったのでしょう。あと確かめた訳では
ありませんが、ジャクソン・ポロックのドリッピングによる作品群も
音楽の影響を受けているような印象を受けます。

アーティストの中でも必ず音楽を聴きながら制作する人、逆に2つのことは
出来ないとか、するべきではないという考えの人もいます。またどちらでも
良いという人もいて、僕はこちらの意見に近いかもしれません。音楽に
引き摺られては意味がありませんが、曲を聴きながら制作することによって
集中力が増したり、反対に作品への過度の没入を防いでくれたり、要は
作品にプラスの影響を与えるのであれば良いのではないのかと思います。

アトリエオーブを開校するとき、外の音が多少気になっていたので、
授業中に音楽をかけるべきかどうか検討していました。結果的に会員
の皆さんから外の音は気にならないとおっしゃっていただけたこと、
また前述のように「絵は絵、音楽は音楽で楽しみたい」というご意見
などもありまして、音楽をかけることは止めました。

まぁ、選曲をすればどうしても僕の趣味に近づいてしまいますし、
もし音楽が必要な場合には個人的にiPodなどで聴いてもらうという
スタンスが、我々のアトリエには良さそうです。







自分の好きなデッサンを考えてみると、画家よりも
彫刻家のものが多いことに気づきます。

彫刻家のデッサンは粘土や木と同じく、足したり削ったり、画面を
こねくり回して作っている印象があって、そういったある種の泥臭さが
自分の好みに合うのかもしれません。実際、彫刻自体にも興味があって、
パリに居た頃、週1回彫刻家のアトリエに通って1年ほど粘土にも
挑戦しました。

その昔、美大の絵画科と彫刻科ではお互いにライバル意識のような
ものがあったそうです。おそらく絵画の人は「三次元世界を二次元で
表現する」、彫刻の人は「三次元を三次元で表現する」ことにプライド
があって、その辺で対抗心が芽生えていたのではないかと想像します。
自分の仕事に誇りを持つのは素晴らしいことですが、優越を考えだす
と少々ややこしくなります。まぁ、それも古き良き時代だったのかも
しれません。

画家は平面上に仮想の空間を描いて作り上げますが、彫刻家は現実に
立体物を作ることでそれを表現します。自分で試してみて絵画の「仮想」
と彫刻の「現実」を表現するための眼の使い方が違うと感じました。

ちなみに敬愛する作家アルベルト・ジャコメッティは絵も彫刻も
やっていましたが、哲学者矢内原伊作をモデルに制作していたときに
「彫刻の方がはるかに難しい」と言っていたそうです。

パリでもジャコメッティをはじめロダン、ブランクーシ、ザッキン
など素晴らしい彫刻作品の数々を見ることが出来ますが、今回は
フィレンツェで見たマリノ・マリーニの思い出を書きたいと思います。

マリノ・マリーニ(1910-1980)はイタリアを代表する彫刻家です。
初めて名前を知ったのはいつだったのか思い出せません。馬と騎手像
の連作がよく知られていますが、僕もその像に魅せられました。

マリノマリーニ美術館には騎馬像やダンサーの連作、ポートレイトと
思われる首像や全身像、そしてリトグラフなどの平面作品が無駄なく
整然と並べられていました。馬や騎手やダンサーの動きなど、とにかく
ひとつひとつの造形が素晴らしかったことを思い出します。じつは
フィレンツェには家族の引率で行ったのですが、このときばかりは
ツアコンそっちのけで館内を何周もしてしまいました。

特に圧倒されたのは巨大な「miracolo」という騎馬像です。
全長2~3mはあったと思いますが、素材を超えてしまっているというか、
ブロンズとは思えない、本当に今崩れ落ちているのではないかと思わせる
躍動感をもつ像で、見た瞬間からその迫力にすっかり魅了されました。

早いものであれから十年以上経ちますが、今でも作品群はもちろん、
館内の空気感や匂いは僕の頭に焼き付いています。

マリーニは騎馬像についてこんな言葉を残しています。

「私の騎馬像は不安の象徴なのです。私は私の時代を観察するとき
こうした不安にとらわれるのです。」






先週そして今週と、エライ大雪でした。

さて、先日絵画や彫刻作品を「画集」と「実物」で見る
印象の違いについてアトリエの会員の方とお話ししていて、
初めてのパリで「モナリザ」を見たときの事を思い出したので、
今回書きたいと思います。

僕が初めてパリを訪れたのは1997年の春です。

当時ドキュメンタリービデオ制作のお手伝いをしていて、
その撮影で1ヶ月間欧州各地で取材をしたことがありまして、
欧州の拠点としてパリに前後1週間ほど滞在しました。

ある晴れた日、撮影も終盤に差し掛かり、嵐のような日程に唯一
の休日が出来ました。初パリの僕はまず一番行きたかったルーブル
美術館へ向かうことに決め、休日が無きモノにならないうちに
早々に街へと繰り出しました。

お目当てはもちろん「モナリザ」です。

与えられた時間は数時間、とにかく有効に使わなければいけません。
ルーブル美術館に入館すると、まぁ広い広い、これが人の住処だった
ことに驚きます。幸いモナリザの展示室までの順路案内があり、まずは
モナリザまで一直線、横目にサモトラケのニケ像など名品の数々を
やり過ごしつつ、 ついに感動のご対面となりました。

「ふうっ....」

モナリザです。おそらく世界で一番有名な絵画ではないでしょうか。
絵について1ミリも知らない人でも一度は観たことがあるという
恐ろしい作品です。あまりにも有名なので実物を観たときに感激が
ないという人もいますが、僕に限ってそんなことは杞憂です。
ガラス越しのモナリザを見つめて感動の渦にいました。

「....ついに観れた」

実物は複製で観ていたときよりも、画面全体が若干スマート
に見えました。たとえば街で有名人を見かけたときにこういう
ことは起こりますが、絵の世界で「画集より痩せている」と
感じさせるとは、さすがはモナリザ、驚きです。

「これがダ・ヴィンチの作品か....」

しばらく眺めた後、朝から歩き通しで疲れたので、少し離れた
正面のベンチに腰掛けました。そして遠目にモナリザを眺めながら、
再び心にぶり返して来る感動の波に浸ってました。

「せっかくだし、もう2〜30分観て行こ...」

とその時!入口から100%理解できる言語(日本語)のご一行が
ものすごい勢いで部屋に入ってきました。その大きなカタマリは
ワイワイガヤガヤ言いながら、僕の前に押し寄せて、あっいう間に
モナリザを黒一色で覆ってしまいました。

学ランとセーラー服。そうです、黒いご一行の正体は
日本の修学旅行生でした。

「モナリザやー!」
「うわっ!小っちゃいなぁー!」

どうやら関西方面の学生さんです。彼らは口々にモナリザの
感想を述べはじめました。日本でも滅多に遭遇したことがない
目の前の出来事に僕の心は狼狽えっぱなしです。呆然としつつ、
まるで自分に言い聞かせるように独り言が口をつきます。

....まぁ、君たちには関係ないかもしれないけど、
....オレ初めてのパリで....今回....仕事も結構忙しくって、
....今日が唯一のお休みで....これも何かのご縁なのでしょう...か、

「ほな、行こかー!」

数分後、引率の先生に促されて黒いご一行は
潮が引くようにその場から居なくなりました。

もはや感動そっちのけで真っ白な灰と化した僕の頭の中には、
なぜか耳に残る、あの学生さんの第一声がコダマしていました。

「モナリザやー!」
「うわっ!小っちゃいなぁー!」

幸運なことにあれから何度かルーブルへ行く機会を得ましたが、
モナリザを見るたびに、あの情景と台詞がフラッシュバックする
ようになりました。





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プロフィール
HN:
今尾則之
年齢:
53
性別:
男性
誕生日:
1971/02/13
職業:
画家
趣味:
古本屋巡り
自己紹介:

東京都生まれ。

1993年 日本大学芸術学部美術学科絵画コース卒業。
2000年 フランス留学 (パリ)

2001年 アカデミー・ド・ラ・グランショミエール在籍

2004年 フランス学士院芸術
アカデミー主催 Paul-louis WEILLERコンクール'04 入選

2006年 帰国
2006年〜08年 デッサン教室講師 (池袋)

2009年 日本芸術センター主催 第3回絵画公募展入選

2010年 個展“La Résonance”
開催 (Gallery 5610/南青山)

2012年 個展“Le Reotur”
開催 (Gallery 5610/南青山)

2009年〜13年 絵画教室講師 (吉祥寺)

2013年 絵画教室 アトリエオーブ開講 (代々木上原)
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