忍者ブログ
絵画教室アトリエオーブ/画家 今尾則之のブログです。
[155]  [154]  [153]  [152]  [151]  [150]  [149]  [147]  [146]  [145]  [144
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


先週そして今週と、エライ大雪でした。

さて、先日絵画や彫刻作品を「画集」と「実物」で見る
印象の違いについてアトリエの会員の方とお話ししていて、
初めてのパリで「モナリザ」を見たときの事を思い出したので、
今回書きたいと思います。

僕が初めてパリを訪れたのは1997年の春です。

当時ドキュメンタリービデオ制作のお手伝いをしていて、
その撮影で1ヶ月間欧州各地で取材をしたことがありまして、
欧州の拠点としてパリに前後1週間ほど滞在しました。

ある晴れた日、撮影も終盤に差し掛かり、嵐のような日程に唯一
の休日が出来ました。初パリの僕はまず一番行きたかったルーブル
美術館へ向かうことに決め、休日が無きモノにならないうちに
早々に街へと繰り出しました。

お目当てはもちろん「モナリザ」です。

与えられた時間は数時間、とにかく有効に使わなければいけません。
ルーブル美術館に入館すると、まぁ広い広い、これが人の住処だった
ことに驚きます。幸いモナリザの展示室までの順路案内があり、まずは
モナリザまで一直線、横目にサモトラケのニケ像など名品の数々を
やり過ごしつつ、 ついに感動のご対面となりました。

「ふうっ....」

モナリザです。おそらく世界で一番有名な絵画ではないでしょうか。
絵について1ミリも知らない人でも一度は観たことがあるという
恐ろしい作品です。あまりにも有名なので実物を観たときに感激が
ないという人もいますが、僕に限ってそんなことは杞憂です。
ガラス越しのモナリザを見つめて感動の渦にいました。

「....ついに観れた」

実物は複製で観ていたときよりも、画面全体が若干スマート
に見えました。たとえば街で有名人を見かけたときにこういう
ことは起こりますが、絵の世界で「画集より痩せている」と
感じさせるとは、さすがはモナリザ、驚きです。

「これがダ・ヴィンチの作品か....」

しばらく眺めた後、朝から歩き通しで疲れたので、少し離れた
正面のベンチに腰掛けました。そして遠目にモナリザを眺めながら、
再び心にぶり返して来る感動の波に浸ってました。

「せっかくだし、もう2〜30分観て行こ...」

とその時!入口から100%理解できる言語(日本語)のご一行が
ものすごい勢いで部屋に入ってきました。その大きなカタマリは
ワイワイガヤガヤ言いながら、僕の前に押し寄せて、あっいう間に
モナリザを黒一色で覆ってしまいました。

学ランとセーラー服。そうです、黒いご一行の正体は
日本の修学旅行生でした。

「モナリザやー!」
「うわっ!小っちゃいなぁー!」

どうやら関西方面の学生さんです。彼らは口々にモナリザの
感想を述べはじめました。日本でも滅多に遭遇したことがない
目の前の出来事に僕の心は狼狽えっぱなしです。呆然としつつ、
まるで自分に言い聞かせるように独り言が口をつきます。

....まぁ、君たちには関係ないかもしれないけど、
....オレ初めてのパリで....今回....仕事も結構忙しくって、
....今日が唯一のお休みで....これも何かのご縁なのでしょう...か、

「ほな、行こかー!」

数分後、引率の先生に促されて黒いご一行は
潮が引くようにその場から居なくなりました。

もはや感動そっちのけで真っ白な灰と化した僕の頭の中には、
なぜか耳に残る、あの学生さんの第一声がコダマしていました。

「モナリザやー!」
「うわっ!小っちゃいなぁー!」

幸運なことにあれから何度かルーブルへ行く機会を得ましたが、
モナリザを見るたびに、あの情景と台詞がフラッシュバックする
ようになりました。





PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
今尾則之
年齢:
53
性別:
男性
誕生日:
1971/02/13
職業:
画家
趣味:
古本屋巡り
自己紹介:

東京都生まれ。

1993年 日本大学芸術学部美術学科絵画コース卒業。
2000年 フランス留学 (パリ)

2001年 アカデミー・ド・ラ・グランショミエール在籍

2004年 フランス学士院芸術
アカデミー主催 Paul-louis WEILLERコンクール'04 入選

2006年 帰国
2006年〜08年 デッサン教室講師 (池袋)

2009年 日本芸術センター主催 第3回絵画公募展入選

2010年 個展“La Résonance”
開催 (Gallery 5610/南青山)

2012年 個展“Le Reotur”
開催 (Gallery 5610/南青山)

2009年〜13年 絵画教室講師 (吉祥寺)

2013年 絵画教室 アトリエオーブ開講 (代々木上原)
コメント
[02/09 NONAME]
ブログ内検索
バーコード
カウンター
忍者ブログ [PR]