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絵画教室アトリエオーブ/画家 今尾則之のブログです。
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自分の好きなデッサンを考えてみると、画家よりも
彫刻家のものが多いことに気づきます。

彫刻家のデッサンは粘土や木と同じく、足したり削ったり、画面を
こねくり回して作っている印象があって、そういったある種の泥臭さが
自分の好みに合うのかもしれません。実際、彫刻自体にも興味があって、
パリに居た頃、週1回彫刻家のアトリエに通って1年ほど粘土にも
挑戦しました。

その昔、美大の絵画科と彫刻科ではお互いにライバル意識のような
ものがあったそうです。おそらく絵画の人は「三次元世界を二次元で
表現する」、彫刻の人は「三次元を三次元で表現する」ことにプライド
があって、その辺で対抗心が芽生えていたのではないかと想像します。
自分の仕事に誇りを持つのは素晴らしいことですが、優越を考えだす
と少々ややこしくなります。まぁ、それも古き良き時代だったのかも
しれません。

画家は平面上に仮想の空間を描いて作り上げますが、彫刻家は現実に
立体物を作ることでそれを表現します。自分で試してみて絵画の「仮想」
と彫刻の「現実」を表現するための眼の使い方が違うと感じました。

ちなみに敬愛する作家アルベルト・ジャコメッティは絵も彫刻も
やっていましたが、哲学者矢内原伊作をモデルに制作していたときに
「彫刻の方がはるかに難しい」と言っていたそうです。

パリでもジャコメッティをはじめロダン、ブランクーシ、ザッキン
など素晴らしい彫刻作品の数々を見ることが出来ますが、今回は
フィレンツェで見たマリノ・マリーニの思い出を書きたいと思います。

マリノ・マリーニ(1910-1980)はイタリアを代表する彫刻家です。
初めて名前を知ったのはいつだったのか思い出せません。馬と騎手像
の連作がよく知られていますが、僕もその像に魅せられました。

マリノマリーニ美術館には騎馬像やダンサーの連作、ポートレイトと
思われる首像や全身像、そしてリトグラフなどの平面作品が無駄なく
整然と並べられていました。馬や騎手やダンサーの動きなど、とにかく
ひとつひとつの造形が素晴らしかったことを思い出します。じつは
フィレンツェには家族の引率で行ったのですが、このときばかりは
ツアコンそっちのけで館内を何周もしてしまいました。

特に圧倒されたのは巨大な「miracolo」という騎馬像です。
全長2~3mはあったと思いますが、素材を超えてしまっているというか、
ブロンズとは思えない、本当に今崩れ落ちているのではないかと思わせる
躍動感をもつ像で、見た瞬間からその迫力にすっかり魅了されました。

早いものであれから十年以上経ちますが、今でも作品群はもちろん、
館内の空気感や匂いは僕の頭に焼き付いています。

マリーニは騎馬像についてこんな言葉を残しています。

「私の騎馬像は不安の象徴なのです。私は私の時代を観察するとき
こうした不安にとらわれるのです。」





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プロフィール
HN:
今尾則之
年齢:
53
性別:
男性
誕生日:
1971/02/13
職業:
画家
趣味:
古本屋巡り
自己紹介:

東京都生まれ。

1993年 日本大学芸術学部美術学科絵画コース卒業。
2000年 フランス留学 (パリ)

2001年 アカデミー・ド・ラ・グランショミエール在籍

2004年 フランス学士院芸術
アカデミー主催 Paul-louis WEILLERコンクール'04 入選

2006年 帰国
2006年〜08年 デッサン教室講師 (池袋)

2009年 日本芸術センター主催 第3回絵画公募展入選

2010年 個展“La Résonance”
開催 (Gallery 5610/南青山)

2012年 個展“Le Reotur”
開催 (Gallery 5610/南青山)

2009年〜13年 絵画教室講師 (吉祥寺)

2013年 絵画教室 アトリエオーブ開講 (代々木上原)
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